遠隔医療事業への夢

遠隔医療事業への夢

弊社代表、坂部は1996年にマレーシアにおけるMSC(Multimedia Super Corridor計画=情報回廊都市計画事業)に参加したのが遠隔医療との最初の接点です。MSCは当時の首相マハティール氏に一元化され、7つの基本柱を掲げていました。その一つが遠隔医療計画でした。私の主な役割は同計画を実施するにあたり必要な法案を策定することでした。

 当時のマレーシアは都市部の医療機関と地域における医療機関の質的格差が大きな課題となっていました。そこで、当時はまだインターネットで容易く他者と接続できる環境になかったため、ISDN等の光ファイバー回線を駆使して都市部の病院と地方病院を接続。当然莫大な投資額になりましたが、この計画は先進国においてもまだ十分な臨床試験すら実施されておりませんでしたので、世界各国から注目されることになりました。

 具体的にどんな医療事業が行われたのかというと、いずれも都市部の病院の地方の特定病院をリンクして、問診から診療データの診断、例えばレントゲンやCT画像に関する都市部の高度専門医が診断し、地方の医師と今後の治療方針について見解を共有し、最終的には手術の支援(都市部の医師が地方の執刀医に助言しながら、手術を実施する)等に至るまで動画像を通じてコミュニケーションを行うというものでありました。

 結局、1997年に遠隔医療法は無事に成立し、アジアでは最も早い遠隔医療が正式に可能となりました。日本では技術的には可能であったものの、診療報酬(保険点数)の観点から遠隔医療による医療費が算定できず、患者の負担額をはじめ医師あるいは医療機関が得る報酬額が定まらず、遠隔医療は足踏み状態となっていました(当時の厚生省の局長通達で極めて限定された実施にとどまっていた)。

 現在では技術分野の観点ではインターネットが発達したため、遠隔医療という表現よりもオンライン医療といった表現が標準になってきています。ノートパソコン、タブレット、スマートフォンさえあれば診察から処方箋の発行まで可能になっていいます。しかし、法律的難題が多いせいか(主に診療報酬制度)、いまだ法的な担保は遅れているのが現状です。とはいえ、それも時間の問題であり、そう遠くないうちに何らかの形で解決することは想像に難くないと私は思います。

 現代は少子高齢化がますます加速しています。特に病院まで足を運ぶことが困難な高齢者や身体障害者などにとっては遠隔医療はありがたい存在ではないでしょうか。私が北海道札幌市に拠点を構えたのは、北海道は市町村間の距離が長いうえ、最近は札幌圏に一極集中の実態があり、地方都市はますます過疎化の一途にあることに着目したからです。しかも高齢者は地方に居住する傾向が高いので、遠隔医療を効果的に活用すれば、北海道の医療環境は大いに改善される可能性が高いうえ、法的難問さえクリアできれば医療の将来展望は明るいのではないかと期待しています。

(2021年7月1日)

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